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Animationweek編集部は、デンマークのヴィボー(Viborg)市にあるアニメーションスタジオ“Nørlum”を訪問、スタジオの共同経営者でもあるプロデューサーのClaus Toksvig Kjaer氏にお話を伺った。Claus氏のアニメーションへの情熱、スタジオの目指す未来、そして、スタジオが制作に関わった3つの美しいアニメーション映画「Song of the Sea」、「Long Way North」、「Miles」の舞台裏について語ってもらった。


アニメーションスタジオNørlum

“Arsenalet”というアニメーションやゲームなどのクリエイティブビジネスのクラスターが集まる場所がデンマークのヴィボー市にある。 クラスターが入居する旧兵舎を綺麗に改築した赤いレンガの建物に、Nørlumはオフィスを構えている。オフィスの入り口にはスタジオが制作した作品のポスターが飾られていて、ドアを開けるとリラックスできるラウンジスペースが迎えてくれた。そして、全てのアニメーターに大きな画面の液晶ペンタブレットが用意され、創作活動に集中できる快適かつ理想的な環境が整えられていた。

Picture1Entrance
Picture 1: エントランス

Picture 2: Lounge
Picture 2: ラウンジ

Picture 3: Working space
Picture 3: 職場風景

Picture 4: Every animator has their interactive pen display
Picture 4: 全アニメーターが液晶ペンタブレットで仕事をしている


アニメーションプロデューサー Claus Toksvig Kjaer氏

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Claus Toksvig Kjaer氏はプロデューサーであると同時にスタジオ“Nørlum”の共同経営者である。スタジオの最新作には第87回アカデミー賞にノミネートされた「Song of the Sea(2014年公開)」、そして2015年7月にアヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞を受賞した「Long Way North(2015年公開)」がある。

 

 

 


アニメーションにインスパイアされた幼少時代

Animationweek (以下AW): ご自身について少しお聞かせ下さい。アニメーションを仕事にしたきっかけは何でしょうか。アニメーションというメディアのどこに魅了されたのですか。

Claus Toksvig Kjaer (以下CK): 非常に沢山のアニメーションを観てきた私の幼少体験から来ていると思います。ミッキーマウスから始まり、たぶん、皆さんがご存知のカートゥンは全て観ていると思います。「となりのトトロ」は大好きな日本の映画の1つで、私は宮崎駿氏からも多大な影響を受けました。私がアニメーション業界で働くようになったのは、こういった色々なアニメを観ていた影響です。あと、私はTex Avery氏の「Droopy」のような楽しいショートフィルムも大好きですね。彼はアニメーションをとても不思議でかつ素晴らしいところへ導いてくれた天才だと思います。「The Road Runner」は光の様な早さで動いていましたよね。私はこの様に色々な作品を観ながら育ちました。これらのフィルムが、私がアニメーション業界で働くきっかけになったと思います。

私がアニメーションを勉強したいと思い立った時、まだインターネットもなく、一般的な大学で学位を取得できるコースもなく、アニメーションをきちんと学べる機会がなくて、苦労しました。今はかなり容易になってきたと思いますが。また、私が、「アニメーションのプロデューサーになりたい」と言った時、私の周りの人達は、「アニメーションプロデューサーになるための教育を受けようとしても、医師や法律家や教師になるための勉強みたいなカリキュラムの教育は見つからないよ」と言いました。そこで、私はThe Animation Workshop(デンマークのヴィボー市にある)の2Dアニメーターのコースで学びました。The Animation Workshopが現在の場所に移る前のことです。まだ40人位しかいない小さな学校でした。もう、とても昔の話のように感じますね(現在、The Animation Workshopは、ヨーロッパを代表する名門アニメーションスクールの1つに数えられている)。

「私達は2Dアニメーションの劇場作品に興味がありました」

AW: アニメーションスタジオNørlumでのClausさんのお仕事をお聞かせ下さい。 

CK: Nørlumはオフィスがデンマークのコペンハーゲンとヴィボー、そしてカナダのバンクーバーの3ヶ所にあります。そして、ヴィボーオフィスの私、コペンハーゲンオフィスのFrederik Villumsen、そしてバンクーバーオフィスのJericca Clelandの3人で会社を経営しています。つまり、私は経営者の1人です。実は、ちょうどカナダでもビジネスを始めたところで、彼女は数ヶ月前に私達のパートナーになりました。

AW: スタジオについて少しお伺いしたいと思います。Nørlumの主な特徴を教えて下さい。

CK: 私達は2Dデジタルスタジオです。私達はCGIを行ったことはありません。2Dの映画の共同制作だけを行ってきています。「Song of the Sea」では1年間を費やして約35分間の制作を担当しました。その後、「Long Way North」の制作に移り、私達は36分間のアニメーション、清書、着彩を担当しました。「Long Way North」 は「Song of the Sea」より尺が短い映画なので、映画全体の約半分を制作したことになります。「Long Way North」では私達はFlash®を使って2Dアニメーションを制作しました。また、「Song of the Sea」ではTVPaint®(∗1)を使ってアイルランド、ルクセンブルク、そしてデンマークでアニメーションを制作して、ベルギーでコンポジットを行いました。TVPaint®は Toon Boom®(∗2)に似た2D映画用のソフトウェアです。私達はコンピューターを使っていますが、Maya®や3ds Max®のようなソフトウェアは使いません。先程スタジオでご覧頂いたようにCintiq®で全部手描きしています。最近はほとんどの作品がCGIですが、私達は手描きです。私達は2Dアニメーションのスタジオだという点では多くの日本のアニメーションスタジオと何も変わらないと思います。ただ、私達は紙を使わず、全てをパソコンのモニターに直接手描きしているというだけです。

∗1, 2: TVPaint®(http://www.tvpaint.com/v2/content/article/home/index.php?lang=ja) とToon Boom®(http://jp.toonboom.com/)はプロ向け2Dアニメーション制作ソフトウェアです

AW: スタジオの歴史について少し教えて下さい。

CK: スタジオは現在5年目です。私達は、まだ規模の小さい若いスタジオですが、映像的に興味あるプロジェクトや素晴らしいアイデアをアニメーション化する努力を続けることで、私達なりに上手くやってこられていると思っています。

世の中には映画、テレビアニメーションシリーズ、ショートフィルム、ゲーム、テレビ広告用のアニメーションなど色々とこなしているスタジオもありますが、私達のスタジオは注意深くプロジェクトを選んできました。なぜなら、そうすることでスタジオの設立時から、自分達の望む仕事ができたからです。私達は2Dアニメーションの劇場作品に興味があったので、素晴らしい映画プロジェクトがないか探し始め、Tomm Moore監督の「The Secret of Kelts(邦題:ブレンダンとケルズの秘密)」を観て、その芸術スタイルに大変心を惹かれました。そして、実は私が彼らと10年近く交流があったこともあり、彼らのスタジオと共同制作するチャンスを掴みました。現在のヨーロッパのアニメーション業界では2Dアニメーションは主流ではなく、プロジェクトの選択肢があまり多くない中で、彼らのスタジオは非常に質の高い2Dアニメーションを制作しています。そして、次に、私達は2Dアニメーションの高い技術力を持っているスタジオを探して、幾つかのスタジオとパートナーになりました。なお、Nørlumは毎年1本の劇場作品を作りたいと思ってやってきましたが、映画のプロジェクトは資金調達から制作作業まで非常に多くの時間を要するので、5年を経て劇場映画の制作実績は2本です。でも、今後も私達の目標は映画を毎年1本制作できるようになることです。

スタジオがヨーロッパにあるアドバンテージ

AW: 現在、アニメーションの制作はCGIが一般的になってきていると伺いましたが、ということは2Dのアニメーターの方々を確保することが難しくなってきているのでしょうか。

CK: 私達は素晴らしいネットワークを構築できる幸運に恵まれてきました。フランスは、依然として2Dアニメーションを作り続けている国の1つで、沢山の2Dアニメーターがいて、毎年、4もしくは5本の2Dの劇場アニメーション作品が制作されています。デンマークとフランスはとても近く、飛行機で1時間半で行き来できる距離ですから、私達は、フランスの2Dアニメーターの方々が次の作品を待っていて手が空いている期間に、彼らにアプローチすることができます。私は、国境を越えた共同制作がヨーロッパのスタジオの主要な利点の1つだと考えています。アメリカではCGIがより好まれていて、多くの2Dアニメーターが仕事を見つけるのに苦労していますから、我々も、もしアメリカにスタジオを構えていたら、とても苦労しただろうと思います。彼らは2Dアニメーションの映画プロジェクトをアメリカで見つけられないので2DのテレビCMや2Dのテレビシリーズの仕事をしています。彼らの中には、2Dの劇場アニメーションプロジェクトに参加するために、ヨーロッパまでやって来る人もいます。アメリカのテレビシリーズの仕事は、たいていの場合、劇場作品よりクオリティーが低いですから。私達Nørlumは、依然として2Dが強いヨーロッパにいることができて幸運だと思っています。

プロデューサーとして全ての意思決定に参加すること

AW: Nørlumは、今まで、それぞれのプロジェクトで、どのような役割を担ってきたのでしょうか。

CK: Nørlumは全てのプロジェクトにて、そのプロデュースチームに参加しています。社内の制作チームを維持するためには、アニメーションを制作受注するビジネススタイルが良いのかも知れませが、Nørlumは外注先として制作のみを受注したことは一度もありません。Nørlumは映画プロジェクトに直接出資して共同プロデューサーになるビジネスモデルを採用することで、映画の制作が実際に始まる前からプロジェクトに参加し、映画の制作過程で他の出資者やプロデューサーと一緒に意思決定をしてきました。私達はその映画にとって最高の制作チームとなるようメンバーを決定し、どうマネージメントしていくかを決めてきました。これらの作業は、だいたい映画制作が始まる2年程前に行われます。また、私達は出資者として、「どの様な人達をターゲットとした映画にするか、どの映画祭に参加するか、国によってブランディングをどう変えて行くか」や、「レビューを参考に決めるか」などを議論して映画をどこで公開するかを決定するプロセスにも参加してきました。Nørlumにとって映画プロジェクトへの参加は、出資、プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクションと継続していく終わりのない旅路の様なものです。映画が公開された後もプロジェクトは続きます。なお、Nørlumは「Song of the Sea」の総予算の約10パーセントを出資して、映画全体の40パーセントにあたる映像を制作しました。

[2ページ目に続きます]

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